18/21

1895人が本棚に入れています
本棚に追加
/651ページ
動かないケータイが、力の抜けた指先から滑り落ちる。 ごとん、と硬い音を響かせてフローリングに転がったケータイに、のろのろと視線を移す。 もう拾う気にはなれなかった。 がらんとしたリビングにはTVボードもなく、充電器の在処なんて探しようがなかった。 左手に握りしめていた、紙を開く。 妻の欄に綺麗に整った文字で「相沢悠里」と記されていて、証人の欄にも妻の友人の名が二人分埋まっていた。 「俺が、…何も知らないのに?」 友人たちは悠里の話を聞いて…聞いただけで。 署名したのか。 何も。 何も。 ……何も。 知らないくせに。
/651ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1895人が本棚に入れています
本棚に追加