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だから。
悠里は出ていってしまったのか。
頭を両手で抱え込み、考える。
ただひたすらに。
何故なのか。
何故、なのか。
「どうして…」
誰も。
俺の声には答えをくれず、
しんと冷たい空気と、
ものが少なくなったせいでやたらと広く感じる部屋だけが。
悠里の答えなのだと。
現実なのだと。
そう、突きつけていた。
のろのろと、顔をあげる。
窓の外を見る。
未だ止まない雨音が、ざあざあと響いていて。
街頭の仄かな明かりに揺れる白い桜が、やけにキラキラと光って視界に映った。
「早く、散ってしまえ」
呟くと忌々しさが募って、俺は乱雑に厚いカーテンを閉めた。
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