5/21
前へ
/651ページ
次へ
◇◇◇◇ 病室に入ると、横になっていると思っていた晴臣は半身を起こし、窓の向こうをぼんやりと眺めていた。 頭に巻かれた包帯が痛々しい。 「晴臣、お前大丈夫なのか!?」 咄嗟に声を出すと、思っていたより大きな音量で静かな病室に響き渡った。 晴臣は驚くでもなく、ゆったりとした動作でこちらを振り返った。 あちこち、痛むのかもしれない。入ったときは見えなかったが、右手はギブスで固定され、白い三角巾で肩から吊られていた。 「まぁ、ダメよ、陵ちゃん。病室でそんな大きな声を出したら」 あとから入ってきた沙耶香は、あんなに心配して青くなっていた癖に、意識のある晴臣を見て安堵したのか陵介を諫めた。
/651ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1898人が本棚に入れています
本棚に追加