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「あちこち痛いけど、動かせないほどじゃないな」 晴臣は左手を上下に動かして見せて、困ったように眉を下げた。 「…ッたく、びびらせんなよ!階段から突き落とされたみたいだとかテレビで見て、慌てて来たんだからな!」 突き落とされたとすれば、間違いなく先週発売された週刊紙に載った記事のせいだろう。 相手の新城玲音は男だが、男女問わず人気のあるモデルで、恨みを買ったとしても仕方がなかった。 「まぁ、半分は自業自得ですわね」 陵介は元気そう?な幼馴染みの姿に安堵の息を洩らし、沙耶香はからかい混じりにふわりと笑った。 自業自得、と言えばそうなのだが。 多分、今でも沙耶香はこの幼馴染みが好きなはずだ。 なのに。 沙耶香はどうしてこんなことが言えるんだろう。 陵介はいつも思う。
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