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確かに晴臣に沙耶香ではない相手が出来るのは、はじめてのことじゃない。 付き合いも長い。 慣れているからか。 諦めているからか。 それでも、友人の立ち位置を変えずにいられる沙耶香をすごいと思う。 陵介にはとても真似できない。 自分なら、出来ない。 ふと。 春先に見た彼の姿を想う。 妙に記憶に残って、忘れられなくて。 言葉を交わしたことすらないのに。 相手が男だとか、そんなことはどうでもよくて。 橋を渡る度、彼を探す自分に気がついて。 人を好きになるのに、理由なんてないことを知った。 遠くに馳せていた陵介のこころを、晴臣の一言が呼び戻す。 「…なんのことだ?俺は突き落とされたのか?なんで」 当の本人は、自分に起こった事態を把握できていないらしく、眉間に皺を寄せて陵介を質問責めにする。
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