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「桜、散っちゃわないといいけど」 窓の外に見える、桜並木を見つめながら悠里はポツンと呟いた。 悠里とはこの夏で結婚6年目を迎える。 「大丈夫だろ?まだ満開になったばっかだし。第一、美優の入園式で咲いててもらわなきゃ困るっ」 仕事が忙しく、朝こんなふうに会話するのは久し振りだった。 娘の美優はこの春から近所の保育園に通う。 俺は「専業主婦なんだから、幼稚園でいいだろ」と言ったが、悠里はうんとは言わなかった。 まぁ、育児の大半(全部、と言った方が正しいか?)を悠里に任せている俺が口出し出来ることでもなかったから、そこは悠里の意見を尊重した。 「そんなこと言って…透は仕事で来られないんでしょう?」 カーテンから手を離した悠里が振り返る。胸元まで伸びた柔らかそうな髪が合わせて揺れた。 その目には非難の色が浮かんでいる。 「う…今日特休貰えるように頼んでくるから…」
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