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慌ただしく席を立つと、ソファに掛けていた上着を乱雑に掴んで、玄関に走った。
「…四月の最初の土曜だよ」
玄関まで見送りに来た悠里が、俺の背中に小さく声を投げる。
「分かった。じゃ、行ってくるっ」
「…うん、いってらっしゃい」
俺が振り返ると、悠里はいつもと同じように手を振って。
いつもと同じようにそう言った。
まさかそれが最後の会話になるなんて、その時の俺は、思いもしなかった。
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