3話『女王の恋』 (12月20日の日記)

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 いつきちゃんのこと、アタシは誰よりも尊敬している。いつきちゃんは心も身体も強くて、かわいい。  子供の頃からいつきちゃんに憧れて、アタシもいつか、いつきちゃんみたいに強い生き物になりたいって、思ってきた。  それが病的な妄想につながり、思いが叶い、アタシは今や本当に最強の女王になってしまったわけだが。  とにかく。  アタシは1年生の時、クラスで、雪ノちゃんっていうやっかいな美少女にいじめられていた。  雪ノちゃんもセーラー服が好きな子だった。毎日セーラー服を着ていた。  雪ノちゃんは肌が白くて髪の色素も薄くて栗色、瞳も茶色で、外人さんみたいな子だった。  ちなみに、一方的にいじめられてたわけじゃない。アタシだって反撃して、雪ノちゃんをビンタしたりして、時には勝てた。  2年生になって、雪ノちゃんとは違うクラスになり、学校でめったに会わなくなった。  会わなくなっても、今でもアタシは雪ノちゃんにいじめられたことを、フラッシュバックで思い出す。  雪ノちゃんを思い出すタイミングはいつも、アタシがコーキ君のことを思う時…………。  アタシが雪ノちゃんにいじめられたのは、雪ノちゃんもコーキ君のことが好きだったから。  アタシがコーキ君のことを好きだと見抜いて、雪ノちゃんはアタシを目の敵にするようになった。  雪ノちゃんの気持ちは分かるから、アタシも複雑な気分だったけど、だからってクラスの女子達巻き込んで、「見えないフリ祭」することないじゃん、と思い、時には雪ノちゃんに殴りかかったアタシだった。  授業がはじまり、アタシは自分の席で、コーキ君の後頭部をずっと眺めた。  コーキ君は日本史の時間も数学の時間も英語の時間も。先生達の講義なぞ聞かず、ずっと窓辺で、校庭の枯木や寒空を眺めていた。  先生達は誰もコーキ君を叱らない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加