第1章

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 部屋に入ってきたのは、眼鏡をかけた、西恭子だった。ピンクのスカートからふっくらとした白い脚が伸びている。黒いふんわりしたセーターの胸のところに確かな膨らみを見つける。初めて見る西の私服姿に、股間が思わず反応する。 「あ、わざわざ、ありがとう」 「……あ、あの、すみませんでしたっ」  突然に深々と頭を下げる西。両脇に立つ多田と香奈がニヤニヤしている。 「え、え、どうしたの?」  意味が、分からない。  おろおろして、おれは多田と香奈に目で助けを求める。 「お前昨日、遅刻ぎりぎりで教室入って来たじゃん。そん時に西がドアの前に立っててお前のことすげえびっくりさせたから、そのせいで倒れたんじゃないかと心配だったんだって。昨日おれと桜木が見舞い行こうって話してたら西も行きたいってことになってさ」多田が笑いながら言う。 「あ、そういえば。確かにびっくりはしたけど」あの時、驚きより興奮が勝っていたことをはっきりと思い出す。  西はまだ頭を下げたままだった。 「あ、あの、西さん、おれ全然大丈夫だし、びっくりしたのは全然関係ないと思うよ。それにいきなりドア開けたのおれの方だし」  背の低い西が少しだけ顔を上げ、上目遣いにおれを見た。「本当ですか?」 「うん。本当。西さんが気に病むようなことじゃないよ。っていうか、なんか、おれの方こそ、心配させてすみませんでした」おれも、頭を下げた。 「あ、いえ、そんな、山井くんが大丈夫なら、いいんです。ホッとしました」西が、微笑んだ。  可愛いなと思う。また股間が熱くなる。生地の硬いジーンズを履いていてよかったと心から思った。 「これ、お詫びに、よかったら、大したものじゃないんですけど」  西がそう言ってピンクの紙袋を差し出してきた。袋の口は赤い紐で閉じられている。 「あ、ありがとう。何か、かえって申し訳ないです」おれは紙袋を受け取る。 「中身は何なの?」香奈が西に問う。 「あ、じゃあ今開けてみてもいい?」  おれが紐に手をかけようとすると「ダメです! おうちに帰ってから開けてください。大したものじゃないですから」  西に、これだけの声量があったんだと驚くような大きな声だった。 「あ、じゃあ、そうします。ありがとう」気圧されたおれはそう言うしかなかった。  ふと見ると多田がニヤニヤと笑っている。
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