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「あ、西さん、おはよう」と多田。
「こないだはどうも」おれはドキドキしながら応える。
「あ、いえ、山井くん、体調は、もう大丈夫なんですか?」西は、本当に恐る恐るといった様子で言葉を発する。
「うん、もう全然平気。ただの貧血だから」香奈とたくさんエッチしたから、大丈夫。
「本当ですか。それならよかったです」西が、大きな胸をなでおろす。その胸に、触れたい。揉んでみたい。乳首を、吸ってみたい。
「それじゃまた」ニヤニヤ笑いを浮かべ、多田が自分の席へ戻っていく。
「あ、あの、本当に西さんが気にするようなことじゃないから。それと、こないだのお土産、ありがとう。おいしかったです」鼓動が早くなっているのが自分でもわかった。また倒れてしまうんじゃないかと少しだけ不安になる。
「いえ、そんな、本当に大したものじゃないんで、全然気にしないでください。全然上手じゃなくて、ごめんなさい。けど、あんなものでよかったら、お詫びにいつでも作りますから」西がすごい早口で言う。もしかしたら西は、男と話したことなんてほとんどないんじゃなかろうか。思えば自分も、香奈以外の同年代の女の子と二人っきりでこんなに話したことはなかったんじゃないだろうか。スムーズとは言えないにしても、こんなにも女の子と話ができているのは、童貞を捨てられた自信ゆえだろうか。
「よう向志、なんだ元気そうじゃん」
「結局、ただの貧血だったんだらしいな」
突然やって来たのは、別のクラスの友人である堤と栗原だった。おれと多田を合わせた四人が、学校から近い多田の家でいつも麻雀卓を囲む面子である。
「ああ、おとといは行けなくて悪かったな。一応、もうしばらくは休ませてくれ。親もうるさいし」おれは小さく頭を下げた。さっきまでそこにいた西はいつしか姿を消している。
「まあ、しゃーねーわな。誰か呼ぶか、それともサンマでもするか」と堤。
「向志、マジで、もう大丈夫なんだろ?」目の細い栗原がより一層目を細めて訊く。
「ああ、大丈夫」セックスしてくれるパートナーが見つかったから。毎週土曜に、やらせてもらえることになったから。もう大丈夫。おれはまだ、死なずに、生きていける。
「なーに、貧血っつうか、こいつはただオナニーし過ぎただけだから」いつのまにか寄って来ていた、多田が笑いながら言った。
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