第2章

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 香奈と結ばれてからの二週間ほどが、おれの人生で最も幸せな時期だったかもしれない。西と自然に会話ができるようになった。放課後に、図書室で西に数学を教えもした。西はお礼だと言って、また手作りのクッキーをくれた。今度はチョコチップが入っていた。何となく恥ずかしくなって、香奈とは学校ではあまり話さなかった。それでも土曜日の三十一日には、母さんがパートに出た朝から晩まで一日中香奈を抱いた。何度かシャワーで体を流しながら、計十一度も射精した。念のためにとコンドームをもう一箱買っておいて大正解だった。性欲が満たされたという満足感からか、授業の時の集中力まで高まったような気がした。病気に感謝した時さえもあった。  そして金曜日。おれは再度の検査入院のため学校を休み、朝食を抜いて着替えやら箱ティッシュやら文庫本やら入ったバッグを抱えてバスでT大病院へと向かった。平日の午前中に私服でバスに乗るのは、少しだけ楽しかった。  受付で診察券を出し、椅子に座って待つこと一分。「お久しぶり」迎えに来たのは、やはり渡辺さんだった。久しぶりに見たが、白衣の女性はやはりいい。 「ご無沙汰してます」おれは立ち上がって言う。 「こっちね」エレベーターに向かって歩き出す渡辺さんの後を追う。 「元気にしてた?」 「ええ、おかげ様で」  エレベーターに乗り、三階で降りた。 「今回も三〇二号室ね」案内されたのは、前回と同じ部屋だった。ベッドに小さなテレビだけの部屋。この部屋で香奈と初めて結ばれたのだ。思い出すだけでまた勃起しそうだった。 「荷物置いたら、またそれに着替えてね。あ、あと貴重品はまた金庫に入れておいてね。確か置き引き事件があったって前も言ったよね? で、着替えたらすぐ始めましょ。外で待ってるから」
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