第2章

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 渡辺さんの指差す先にはベッド。その上に青い病院着が置いてあった。バッグをベッドの側に置き、手早く着替える。早く検査を受けたかった。終わらせたかった。香奈とエッチをするようになったことで、自分がもう大丈夫になったのだという、はっきりとした証拠が欲しかった。前回退院して以来、榊先生がおれの携帯電話に連絡してくることはなかった。おれに知らせるような新しい事実は見つからなかったのだろう。どんなに満たされていても心の奥底にしっかりと根付いた不安を、今回の検査で一掃したかった。病気のことがよくわからない以上、一掃されるはずなんてないことは理性ではわかっていても。  病院着に着替え、財布と携帯を金庫に入れて暗証番号を覚えてロックをし、部屋を出た。壁に寄りかかっていた渡辺さんに声をかける。 「行きましょう」  血液検査に尿検査、血圧測定に再度のMRIにCTにMRAにまずいバリウムを飲んでの胸部X線検査に腹部超音波検査。おれが検査慣れしたためか、渡辺さんの手際がよかったのか、この日の検査はしごく順調に終わった。解放されて部屋に戻ったのは、まだ四時過ぎだった。榊先生と顔を合わせることはなかった。  ベッドに横になって持って来た文庫の小説を読んでいると、ノックの音がした。 「はい、開いてます」  ドアが開き、ぞろぞろと入ってきたのは見慣れた連中だった。多田に堤に栗原、そして香奈と西。 「見舞いに来てやったぞ」「大丈夫ですか?」「相変わらずヒマそうだね」次々かけられる言葉に、あたたかいものがこみ上げて来る。 「なんだよ、ただの検査なんだからわざわざ来なくていいのに」おれは強がって言う。本当は泣きそうだった。学校で倒れて以来、一人でいるのが辛かった。誰かと一緒にいたかった。誰でもいいから、そばにいてほしかった。 「それじゃあな」「いい加減麻雀したいからあんまり待たせんなよ」「お大事にしてください」「お母さんによろしく」「歯磨けよ」
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