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悪神祓いを始めてから数日後、情報収集の成果が出ないのを機に、隣の市にある別神社の担当区域へ移動することとなった。禁じられている無断での越境行為だ。
誰が敵なのか分からない状態では打つ手はなく、仕方なしにひっそりと行動することとなった。
今回は悪神祓いが目的ではなく、端からこの区域の戦巫女を監視することが最優先事項だった。そのはずだったのだが、到着したその矢先、明らかに戦巫女に成り立ての少女とその神使が、少しだけ難易度の高い悪神に追い掛けられていた。
放置をしようとしていた優子に、瑞希が話も聞かず、助けに駆け寄る。そんな瑞希を支持するようにレナも走り出して、瑞希に追い付く。優子は、溜息一つ吐いて、少女の救助に方針を変える。
優子の指示で瑞希とレナは追われていた少女と神使を抱えて高く飛び上がると、悪神の正面に待ち構えていた優子の術により、悪神は取り押さえられた。
助けられた少女は、見習いの戦巫女だった。
見習いはベテランの戦巫女を含めた6人体制で夜回りをする掟だが、血気盛んな少女は一人でも悪神祓いができると根拠のない自信を胸に、黙って隊から抜け出し、結局、優子達に助けられたのだ。
少女の神使は乗り気ではなかったと愚痴をこぼす。それに対し、少女は『シンカ』の許可があれば悪神なんて簡単に払えたと、弁明する。
優子が少女と少女を止められなかった神使を説教している間、瑞希が会話のなかで出た『シンカ』という単語の説明をレナに求めた。
レナによると、戦巫女と神様達には『神通力』という、魂の力を操る技術がある。戦巫女は、増幅器の補助を受けながらその力で、札を操り、悪神祓いの援護に回る。普段の悪神祓いで優子の援護がないのは、それほどの事態ではなかったからだ。
そして、神様達は神通力を解放することにより高位の神様の姿へと変えることが出来る。
それを『真価』というそうだ。
付け加えて、レナが今の瑞希と説教を受けている神使の姿は神位(シンイ)三段、通称『成長期』。真価によって発揮されるとすれば、優子の術によって抑え付けられている悪神と同じ、神位四段の通称『成熟体』だと説明した。
付け加えの説明は瑞希の耳には入って来なかった。それは、力を解放して変身するという説明が、まるで変身ヒロインの資格が自分にはあるような説明が、瑞希の心を躍らせていたからだ。
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