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高校入学と同時に、神田優子(カンダ ユウコ)は、神様の専門家になった。
表向きは地元にある新座大社で、アルバイトの巫女として雑用係をする高校生。
その裏では、夜な夜な町をさ迷う「良くない神様達」から町の安全を保持する神様の専門家として、活動を行っている。
そんな活動を続けて今年で三年目の春を迎えた。優子は高校三年生になり、いつも通り、神社の雑用をしていた。
その最中、親友からメールが届く。内容は、夜中に公園で会いたいとのこと。
メールを送って来たのは、中学校からの仲である篠崎瑞希(シノザキ ミズキ)からだ。
瑞希は頭の出来が良くないけれど、笑顔が似合う元気で愛嬌のある子だ。
つい先ほど、学校の下校のときには、普段と変わらない笑顔で別れたあの瑞希が、電話ではなく、わざわざ夜中に会いたいという。
今までに、こんな呼び出しをされたことは無かった。
優子と別れたあと、何かが起きたのだろうか。顔を見て話したい理由は何なのだろうか。優子の胸がざわめく。
仕事中のため、電話ではなくメールで様子を訊ねようと、スマホをいじり始めた優子。
すると、神主から声を掛けられた。
声に驚き、注意されると思って素早くスマホをしまうと、それは単に休憩を促すものだった。
優子は、神主と共に休憩に入る。
瑞希に連絡をしたい気持ちはあったが、神主が真横に座っていることで、上司の前でスマホをいじるような不躾なマネが出来ない状況に置かれてしまった。
落ち着かない様子の優子に、神主が心に良いからとお茶を渡す。
お茶を飲み終えたら、席を外そうと思い、口に含んだ。すると、お茶で流されたかのように焦りが鎮まったのだ。
よく考えれば、時間を指定しているのだ。きっと、瑞希にも心の準備があるだろう。話を聞く側が焦ったところで、良いことなどない。
休憩を終えた優子は、すっきりした気持ちで仕事を時間まで終わらせ、冷静な状態で待ち合わせ場所へ向かった。
先に着いて待っていると、瑞希は少し遅れてやって来た。表情からして、深刻な話ではなさそうだ。
安心から、遅れて来たことに少々皮肉を言うと、瑞希が不思議なことを口にする。
自分が呼び出された用件を優子に訊ねて来たのだ。
呆けた優子に瑞希が着信メールを見せると、そこには、優子から瑞希を誘う内容の文が記されていた。
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