10年遅れのクリスマス

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*** 「はい、そんな感じでよろしくお願いします」 宣伝用のイラストのラフ画を検討のあと、原宿駅への道を急いだ。 目の端に移るのは電飾や色とりどりのプレゼントで飾り立てたショーウィンドウ。 「クリスマス一色ですねえ、環(たまき)副編」 同行した綾菜がディスプレイを覗き込みながら言った。 「その副編ってのやめてって言ったでしょ。環さんでいいわ」 「あ、はい、そうでした」 綾菜は笑って肩を竦めた。 それにしても人が多くて、まっすぐ歩くのが難儀なくらいだ。 「クリスマスの記事なんて10月初めに書いちゃったから、なんか大昔のことみたい」 綾菜は今の部に来る前は女性誌をやっていた。 ファッションもそうだろうけど、雑誌も、作るほうは何ヶ月も先行している。 「あ、この店」 綾菜の足が止まった。 「クリスマス特集で紹介したんですよ。お、流行ってるみたい、ヤッタ!」 そうだよね。自分の張ったアンテナで書いた記事でとりあげたものが当たると、嬉しかったものだ。
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