カウントダウン・2

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 2月12日の晩の事。  テレビの真ん前に陣取る蒼葉は、真剣な顔をして液晶画面を覗き込んでいた。  まばたきもせず食い入るように見つめるその先には、学生服を着たドラマの主演俳優。  高校生の青春ものだなんて、蒼葉の好きそうなドラマだ。  なんて思いながら画面から目をそらしたあたしは、ふと気が付いてもう一度見た。  この人……。 「榊司(さかき つかさ)ってカッコイイよね?」  隣に座ってそう言うと、返事はなく、代わりに驚いたような声が聞こえた。 「えっ」 「えっ?」  思わず聞き返すと、蒼葉は今度はまじまじとあたしの顔を見つめた。 「紅花と意見が合うなんて……珍しい」  だって好きなんだもん……。  悪い?とでも言うように見つめ返した。  彼は最近のあたしのお気に入り。  どちらかというと目立つタイプじゃないし、いわゆる花形俳優の前では霞んでしまう。  けど、見ているうちにいつの間にか、その表情に目が離せなくなっているような……。  いいなと思うのは、自分の心にいる人を、テレビの中の彼に無意識のうちに重ねてしまうからなのかもしれない。  もしかすると、隣の蒼葉も同じことを考えているのかな。  そう思うと、なんだか急に胸の奥がむず痒くなった。
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