偽書桃太郎!!

1/1
前へ
/52ページ
次へ

偽書桃太郎!!

「ぐうぅ…例えワシを殺しても第二、第三の鬼が現れるであろう。」 「はあん?」 桃太郎は眉を潜める。 この日の為に鍛錬を行って来た彼にとって、それはあまりにも呆気ない結末であった。 鬼ヶ島に到着した彼が目にした光景は酒に酔い、馬鹿騒ぎをしている鬼達の姿であった。 鼾をかいて寝ている者さえ居るではないか。 油断大敵。 犬、猿、雉をけしかけ噛みつかせ 引っ掻き、目玉を啄む。 「うひやあ!」 弱い。 これが本当にあの噂に聴く鬼であろうか。 抵抗する所か、泣き叫び逃げ惑い命乞いをする鬼達に留めを刺す桃太郎。 「貴様が総大将か。何か最期に言い残す言葉はあるか?」 「ぐうぅ…くくく。貴様が日本一の桃太郎か。だが、若い!若いな!! 貴様はまだ解っておらんのだ、この世の摂理をのう!ワシの首を討ち取ったとて終わらぬ。 文字通り鬼の首を取ったとて、世に悪は栄え続けグワバ!!!」 「はん、馬鹿が…。台詞が長いわ。」 鬼の首領の首を跳ね、都から奪った金銀財宝を荷車に乗せる。 「あなた様が鬼達を退治して下さったのですか…!!」 舟へと向かう途中で彼は足を止める。 都や数多の村々から連れて来られた女達である。 鬼達は好き放題、酒池肉林の限りを尽くしていたのだ。 「桃太郎様、よくぞ助けて下さいました。」 桃太郎は島を見渡す。孤島のこの城には酒、女、財宝。 「なる程…。悪く無い。」 それからと言うもの、桃太郎は島に留まった。 酒を食らい女を抱き、食料が尽きては都に現れ食料を女を攫い飽きては殺した。 : それから二十年。 「やい、貴様が鬼ヶ島の大将だな! 私は桃次郎、貴様を討ち損なった桃太郎のニ代目だ!」 「ぐははは!貴様がそうか。懐かしいぞ、俺も遥か昔そんな目をした男を見たぞ。先輩として教えておいてやろう、例え俺を倒しても必ずや第二第三の鬼がこの島に現れるであろう…!!」
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加