泣いた青鬼

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泣いた青鬼

昔ー昔。 在る村にリングが有った。 「赤コーナー、燃える闘魂赤鬼ぃぃぃ!!」 「しゃっコラ!!」 「青コーナー!ルール無用の残虐ファイト破壊の帝王青鬼ぃぃぃ!!」 「ヒャッハー!!てめぇの血液は何味だぁぁぁ!?」 太鼓が打たれ、銅鑼が打ち鳴らされ文字通り鳴り物入りで両者が土俵入りを果たす。 村の支配権を賭けて、鬼達の熾烈な争いが今幕を開ける! 「しゃあコラ!!」 「おお!!赤鬼のチョップが入った!赤鬼先制ー!!」 村人達は歓声に湧く。勝負にかこつけ、米を賭ける裏の勝負が観客席で行われているのだ。 「キエー!!」 「おおっと、青鬼パンツに凶器を隠していた!あれは何だ…栓抜きだあぁぁぁ!!汚い、汚いぞ青鬼!!」 客席からブーイングが起こる。 青鬼は卑怯を恥とも思わず、下劣に笑い客席に唾を吐く。 赤鬼の背後を取り、裸締めの状態から頭部を栓抜きで殴り付ける!! 「へへ。 い、今や赤さん。 ワテを思っきりどつくんや…!!」 「あ、青…そんな事したらお前…。」 何と、あろう事か二人はグルだったのだ!! 村を襲い、悪行の限りを尽くす青鬼に正義の鉄槌を下す赤鬼の勧善懲悪のストーリー。 これらは全て民を欺く筋書きだったのだ!! 「兄さん、どーしても金が必要なんやろ?妹の手術の費用が要るって、言ってたやろ?? ワテはヒールや、民からも嫌われとる。プロレスラーは丈夫やさかい本気でかましい!」 「でも…お前、今日も負けたら次はジャカルタに飛ばされるって事務所の社長が…。」 「な、何やて!? ジャカルタやなんてワテ聞いてへんよ!?」 「おっとぉ!!両者、組み合ったまま動かない。一体どうしたんだー!?」 ナレーターと解説が不信な目を向けると、客席にもどよめきが広がる。 「おい、審判ちょっと待ちい!!」 腕を解いて青鬼がコーナーに向かう。 「させるか!! ダアアアシャアアッ!!」 赤鬼、賺さず低空ドロップキックをお見舞いする。 ロープを握っているにも関わらず、更なる追撃を続ける。 「良いぞーー!!赤鬼ぃ!!」 「やっちまえー!!」 真の鬼とは人の心に巣食うのである。
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