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偽書桃太郎!!
「ぐうぅ…例えワシを殺しても第二、第三の鬼が現れるであろう。」
「はあん?」
桃太郎は眉を潜める。
この日の為に鍛錬を行って来た彼にとって、それはあまりにも呆気ない結末であった。
鬼ヶ島に到着した彼が目にした光景は酒に酔い、馬鹿騒ぎをしている鬼達の姿であった。
鼾をかいて寝ている者さえ居るではないか。
油断大敵。
犬、猿、雉をけしかけ噛みつかせ
引っ掻き、目玉を啄む。
「うひやあ!」
弱い。
これが本当にあの噂に聴く鬼であろうか。
抵抗する所か、泣き叫び逃げ惑い命乞いをする鬼達に留めを刺す桃太郎。
「貴様が総大将か。何か最期に言い残す言葉はあるか?」
「ぐうぅ…くくく。貴様が日本一の桃太郎か。だが、若い!若いな!!
貴様はまだ解っておらんのだ、この世の摂理をのう!ワシの首を討ち取ったとて終わらぬ。
文字通り鬼の首を取ったとて、世に悪は栄え続けグワバ!!!」
「はん、馬鹿が…。台詞が長いわ。」
鬼の首領の首を跳ね、都から奪った金銀財宝を荷車に乗せる。
「あなた様が鬼達を退治して下さったのですか…!!」
舟へと向かう途中で彼は足を止める。
都や数多の村々から連れて来られた女達である。
鬼達は好き放題、酒池肉林の限りを尽くしていたのだ。
「桃太郎様、よくぞ助けて下さいました。」
桃太郎は島を見渡す。孤島のこの城には酒、女、財宝。
「なる程…。悪く無い。」
それからと言うもの、桃太郎は島に留まった。
酒を食らい女を抱き、食料が尽きては都に現れ食料を女を攫い飽きては殺した。
:
それから二十年。
「やい、貴様が鬼ヶ島の大将だな!
私は桃次郎、貴様を討ち損なった桃太郎のニ代目だ!」
「ぐははは!貴様がそうか。懐かしいぞ、俺も遥か昔そんな目をした男を見たぞ。先輩として教えておいてやろう、例え俺を倒しても必ずや第二第三の鬼がこの島に現れるであろう…!!」
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