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「うぅ、暇すぎる……、体動かしたい……」
廉は家の自室で布団に伏せていた。
あの後、圭たちに運んでもらって家に着いたのだ。ちなみに父親には『人助けをして、高いところから落っこちて怪我した。数日は寝かしておかないと駄目だ『
』と結斗が説明したらしい。
しかも父親はそれを信じて、このように何ともないのに寝かされているのだ。ちなみに怪我は結斗の符によって完全に治っていた。
あの後、誰かが行方不明になったという事件は起きていない。まるで誰も知らなかったかのように事件は忘れ去られるだろう。廉ですら、あれは夢ではなかったのかと思っている。
「夢なら、良かったんだけどね‥‥‥」
「夢なら、何だ?」
部屋に圭が入っていた。しばらくの静寂の後、わぁー!という声ともに飛び上がる。
「な、な、何でいるのよ!?」
「お見舞いだ、きちんとノックもしたぞ」
「そう、ならいいけど‥‥‥」
「具合は大丈夫か?」
そう言うと彼は何故か、そのままのりんごを渡す。赤々としたりんごである。しかし廉は気づかずそのまま受け取ると、
「うん、全然大丈夫だけど‥‥‥」
すると廉はりんごを軽く握ったが、その瞬間りんごが砕け散る。
「え?うわぁ!?」
「やはり力の制御は出来てないみたいだな‥‥‥。あ、あと夢じゃないからな」
廉は砕けたりんごを慌てて拾っていたが、その言葉にえ?という声を上げる。
「あれは夢じゃない。そして、‥‥‥お前の覚悟も幻じゃない。廉、あのときは助かった、ありがとな」
圭はそう言って廉に笑いかける。すると彼女の顔がみるみる赤くなっていき、頭から蒸気が出たかと思うと倒れてしまった。すると表情を戻した圭は、
「はぁ、こりゃ寝てないと治らんな」
そう呟くと、圭は部屋を出てドアを閉めた。
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