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【餃子日和(1)】
火曜日のポカポカとした昼下がり。アイ子は縁側でゆったりと読書を楽しんでいた。
すると。
「ニーハオ!」
何の前触れもなく、姉のマイ子が飛び付いてきた。何故かチャイナ服を身に纏い、パンダのぬいぐるみを抱いている。
「…何、その格好…?」
「中華やよ!」
「………」
全くわけがわからない。
「まあそれは置いておいて、」
マイ子はぬいぐるみを床に置くと笑顔で言った。
「餃子作ろ!」
それは唐突過ぎた提案だった。
「………」
長女ロイ子の前に並べられたのは、大きなボールに入った、餃子の具とはとても言えないような、得体の知れない物体であった。
「ちょっと…自分なりにアレンジするつもりやったん。そんでいろいろ入れた結果…」
「こんなことになってしまった、と」
「…そういうこと」
アイ子がそう告げた瞬間、ロイ子はボールを両手で持つと立ち上がり、中身をシンクの流しに捨ててしまった。無言でくるりと振り向いたロイ子に、2人は覚悟したが、ロイ子は言った。
「それじゃあ、今度は皆で作りましょうか」
ニコニコと笑顔のロイ子に2人は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにロイ子の元へ駆け寄った。
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