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◇
視界が激しく明滅したような気がした。回復して目を開くと、果てしない平野。
「さて、ここはフランスか?」
最早驚きもせずにあたりを確かめながら歩く。自身は白人系統の人物になったようだ。遠くに豆粒大の動く何かが見えた。
「遠いが歩くしかないか」
見えているが恐らく五時間やそこらはかかるはずだ。逆に見えすぎているのが気になる、きっと現地人の血が混ざっているのだろう。
文句を言っても聞いてくれる相手はいない、黙々と歩き続けて豆粒が人になるまで近付いた。
「こんにちは」
フランス語で黒人に挨拶をする、だが首を傾げて警戒するばかりだ。
「キ!」
「ん、ああ悪かった、こんにちは」
アラビア語に変えて挨拶をやり直す。体の力は抜いておく、争って単身でどうにか出来ることもない。
「お前はここで何をしている!」
「フランスの王太子を認める聖女が現れる。それを助ける為にこの地に使わされた、天の使いだ」
――多分そんなとこだろ。俺だってよくわからん。
狂人かそれとも御使いか、二者択一ならば有り難い限り。
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