1991人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
――俺にとっては危険すぎる場所にやってきてしまったな。
前に美術館などと笑われたが、晴香の父親が仕事の伝で貰った、世界の遺品博覧会チケットを手にしてビルの前に立っていた。
「今回はお前の趣味に合わせてやったよ、感謝しろよな」
肩に手を置いて御子柴がにやにやしている。無料のチケットは学生にはとても有り難いものなのだ。
「感謝の対象はお前じゃなくてオヤジさんだろ。ありがとう、晴香」
「いえ、島さんと来られて嬉しいです」
つい冴子の顔色を気にしてしまう。だが彼女はたまたま違う方向をむいていた。意図してかどうか、察して敢えてすぐには関わらないようにしておく。
――出るまでに体感で何年の冒険になるやら。
入館時に簡単なパンフレットが渡された。ざっと目を通してみると、ヨーロッパで百年戦争、アメリカは南北戦争、アフリカ、アジア……と盛り沢山。迂闊にトリップしたら最後、どうなるかは島には解らない。
「龍之介君、あれ!」
指差す先には微妙に見覚えがある品が展示されていた。
「待ち人よ永遠に、か」
――何事もないわけにはいかなそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!