今日は作者が精神的にアレだから

594/839
前へ
/839ページ
次へ
 一階から三階までが展示会場らしく、係員が案内板を階段付近に設置している。おおらかな時代だ、細かな苦情で様々なイベントが丸くなるようなことはない。 「これがメインの展示ね。ジャンヌダルク、オルレアンの乙女、彼女が手にしていた軍旗のレプリカ実寸大ですって」  ついでに手にしてみることが出来るものまで置かれていた。試しに冴子が持ってみる。 「結構重いわね!」 「あ、私も持ってみます」  合金やらグラスファイバーやらで軽量化されていない、木製ならばまだ比較的軽いが、それにしたって遠くからもわかるように掲げる旗を支えるのだ、手軽に持ち歩き出来るようなものではない。 「日本ではいい人みたいなイメージだよな?」  説明のプレートには、異端者として処刑されたと書いてある。聖女として認められてはいるが、異端者の烙印はそのまま。フランスに貢献したのは確かだが、宗教的には未だに腫れ物扱いなのだろう。 「ね、龍之介君も持ってみたら?」 「そうだな」  ――経験談としての予測だが、手にしたが最後、俺は中世に行く自信がある。
/839ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1991人が本棚に入れています
本棚に追加