1991人が本棚に入れています
本棚に追加
一階から三階までが展示会場らしく、係員が案内板を階段付近に設置している。おおらかな時代だ、細かな苦情で様々なイベントが丸くなるようなことはない。
「これがメインの展示ね。ジャンヌダルク、オルレアンの乙女、彼女が手にしていた軍旗のレプリカ実寸大ですって」
ついでに手にしてみることが出来るものまで置かれていた。試しに冴子が持ってみる。
「結構重いわね!」
「あ、私も持ってみます」
合金やらグラスファイバーやらで軽量化されていない、木製ならばまだ比較的軽いが、それにしたって遠くからもわかるように掲げる旗を支えるのだ、手軽に持ち歩き出来るようなものではない。
「日本ではいい人みたいなイメージだよな?」
説明のプレートには、異端者として処刑されたと書いてある。聖女として認められてはいるが、異端者の烙印はそのまま。フランスに貢献したのは確かだが、宗教的には未だに腫れ物扱いなのだろう。
「ね、龍之介君も持ってみたら?」
「そうだな」
――経験談としての予測だが、手にしたが最後、俺は中世に行く自信がある。
最初のコメントを投稿しよう!