第二話 時空神クロノスの蔵

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次の瞬間、周囲の風景がボヤけて無くなり、やがて真っ暗闇になった。そこへ、ひとつの明かりが灯る。俺は、そのまばゆいばかりの明かりの方へ、うっすらと開けた目をやった。  そこには、美しい脚線美の、華やかな紅の衣装を身に纏った美少女が立っていた。 「櫻井君、あたしの元に来て。一緒に、素敵な夜を過ごそうよ。」 なんだろう、体の力が抜けていく。そうだ、きっと、俺はもう死んだんだ。今更何をしても一緒だ。だったらいっその事、この子の為すがままになってもいいじゃないか。蒼井のいうように、蒼井の…。  目の前に立っていたのは、蒼井楓花に見えた。何故彼女があのように露出度の高い格好をしているのかは分からないが、俺にはむしろどうでもよかった。  蒼井が俺を呼んでるんだ。行ってあげなくちゃ、早く、彼女の元へ。  その時、目の前の闇が、空間ごと切り裂かれ、青空が広がっていった。 「しっかりして、蒼真!!」 俺はハッとして我に返る。そう、無論、幻覚を見せられていただけだった。 「彼女の持つ妖術よ、捕らわれたら最後、精気を吸いつくされる!」 薺の叫ぶ声に振り返ると、彼女は両手に氷のような細い剣を握りしめて立っている。
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