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港がだんだんと見えてきた、いつも見る見慣れた風景だ。小さな漁船が数隻と、あと巨大な空間に出来た穴…。穴!?なんなんだあれは!?海上の数十メートル上空に浮かぶ巨大な謎の穴。歪というレベルの大きさじゃない。ここから見ても、おおよそ直径20メートルはあろうその穴。
「もしかして、昨日言ってたゲートって、あれのこと?」
「そう、あれがゲート。発見が早かったから、まだ愚浪種たちは動いてないみたい。でも、放っておくと、町に奴らがあふれることになる。種によっては、日中も動く輩もいるけど、ほとんどの愚浪種は、夜行性なの。」
なるほど、だから日没前のあの時間に俺を襲ってきたわけか。だけど、なんで俺なんだ。俺じゃなきゃいけない理由なんてどこにあるのだろう。
「昨日の化け物は俺のことクラとか言ってたよな?あれ、なんのこと?」
いちいち質問されるのが嫌いなのだろう。薺は疑問符を振るたびにあからさまに嫌な顔をする。
「昨日も言ったけど、お前はもう普通の身体ではないの。だから、バディと契約を結ぶまでは、からっぽの、中身のない蔵なのよ。早いとこ、バディを見つけて契約を結ばないと、その身体、愚浪種に乗っ取られるか、力尽きて無に還ることになる。愚浪種に奪われた肉体は、その愚浪種の餌となるのよ。」
聞いた自分が青ざめてしまった。冗談じゃない、あんな奴に身体を乗っ取られるなんてごめんだ。俺は、今の自分に何ができるかは分らないが、やれるだけの事はやってみようと決意し始めていた。
「愚浪種を放置してるとどうなるんだ?」
「種別によって様々だけど、幻魔に関して言えば、地上の空気を吸い続けて2時間もすれば、腐って死んでしまうのよ。」
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