第二話 時空神クロノスの蔵

9/23
前へ
/23ページ
次へ
「ちょっと待って!」 薺が、不意に俺の手をつかんだ。まさか、震えてるのか?あんな怪物と戦った強い彼女が?いったい…何故。  そう思った時には、すでに薺は俺の腕の中にいた。薺は泣いていた。だが、理由を聞くのはやめておこう。いずれ、自分の口から話す日が来るかも知れないし。その時まで、そっとしておく方が良いだろう。そう思ったが、知りたくないかと言うと、実際そうではない。ミステリアスな彼女の事は、ちょっと気にはなっていた。 「あたしは、お前の見てるあたしは、本当のあたしじゃない。あたしは、そんなに強くない。だから、怖い時もたくさんあるし、こんな宿命背負いたくないと思ったことも何度もある。だからお願い!今だけ、今だけでいいから、このままいさせて。」 俺の気持ちを悟られたのかと思うほどに、絶妙なタイミングで彼女は語り始めた。断る理由なんてない、彼女の請け負っている問題は、そんなに安請け合いできるようなものではないんだ。だからこそ、悩み、苦しみ続けているんだろう。 「あたしは今から、ゲートに乗り込むわ。だから、一緒にバディを探しだすっていう約束は、果たせないかもしれない。その時は、自分でバティを見つけて。必ず見つけるのよ。」 ん?何を言ってるんだ?それはいったい…。 「どういう意味なんだ?果たせないかもって。」 「クロノセイバーだって、無敵ではないんだ。死ぬ者だっている。だから、ここで終わりかもしれない。そんな思い、何度も経験してきたけど、慣れてると思ってたけど、やっぱりダメ。怖いものは怖いんだよ。」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加