第1章

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Woods in woods (森の中の森) 第一章 森の守り人   西暦三〇二四年。地球の地上八割を森が締めていた。  事の発端は西暦二五〇〇年、環境破壊により、地上から森が消えたことに始まる。  地上には、保護された森以外なく、このままでは全ての生物が絶滅するかもしれないという危機的状況となった。自然の復活か生物の絶滅か、カードは二つに一つしかなかった筈だった。  しかし、植物が進化を暴走させた。植物は自ら動き、人間を食べ、人間を攻撃し種を保護した。人間は植物と戦い生き延びる術を見出したが、次に植物は細菌を発生させ、人間を生きながら腐らせ、自らの栄養とした。  人間と植物、食うか食われるかの戦いとなり、初めて共存という意識が生まれた。  今、人類は植物と共存への道を歩んでいる。  米花市、地上一五〇〇階建ての高層ビルを十基で構成された百万人都市。一基のビルに約十万人が生活する。ビル一基には、ビジネス街、病院、学校、ショッピング、公園、レジャー施設等を備え、ほぼビルの中で一生を完結できる程の規模を持つ。  ビルから僅かに離れると、そこは森で、次の都市まで五〇から二〇〇キロメートルは森が続く。人は、細菌と植物の攻撃の恐怖から、森へは近づく事が無い。他の街への移動には、地下に張り巡らされた通路を使用するが、植物が活発化している昼には使用できない。根に捕まって捕食されてしまうためだ。空中の移動も同様に、動く植物に捕食される危険を孕む。日中は、ビルの中から出ない、これが住民に課せられている規約となる。ある、例外を抜かしては。  米花市の第一基ビル。このビルの五〇〇階地区は全て学校で締められていた。  五〇〇から五九九階までの百階に、幼稚園から大学院まで全ての学校が集中して存在している。  そこに通学する俺、百鬼 友秋(なきり ともあき)軍部に所属しているが、現役高校生、兼、森の守り人。日中、ビルから出ない住人の代わりに、早朝ビルの周辺の森の様子を観察し、報告後に学校へと向かう。 「アキちゃん、一緒に学校に行こう」  同じく興野 天海(きょうの てんかい)も森の守り人で高校生だった。 「興野、もう少し早く起きないのか?見回りギリギリだぞ」 「ギリギリでも終わればいいの」  きっちり制服を着ている俺とは違い、興野は着崩れた状態だった。ネクタイをゆるめて、シャツのボタンも外している。
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