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蔓種の繊維に微弱な電気を流し、義手の神経とする。動く事は確認できたが、操作まではまだ時間がかかりそうだった。
片方の腕だけで、一万本を超える繊維の本数を使用したのだ。簡単に操作できない代わりに、どこまでも繊細に動く筈の義手となっていた。
[友秋、ごめんな。留守、守れなくて]
「冬樹、俺だって家族守りたかったよ。居なくて、ごめんな」
また涙が溢れる。又、冬樹が涙を拭おうとしたので、今度はすかさず逃げた。
「リハビリのスケジュール出しておくけど、医師は居るのここ」
病院ではなく、研究所だった。俺達は、冬樹が病室に移るまでを確認し、それぞれ家に帰ることにした。
家に戻ると、興野が酷くピリピリしていた。居ることに慣れてきた桜井と、宮野が横を向いている。興野がピリピリしている理由を知っているのだろう。
「加賀谷が誘拐された。しかも、運悪く、死体で発見された」
どうして加賀谷が?何故、興野がピリピリしている?共通事項は、俺の多分免疫だろう。俺は加賀谷に免疫を渡してしまった。
「これで、感染された免疫では売買対象にならないと知れ渡っただろうけど、他には誰だ?」
「時国と、北見」
直ぐに、桜井がどこかに連絡していた。こんなことになるなんて、想像もしていなかった。
「表面上は、加賀谷は事故死になる。学校では影響が大きいので、事実は絶対に口に出すな」
友人が亡くなったというのに、真実も言えない。しかも、原因は俺だ。
「ワクチンはいつ出来るのか…?」
俺は自分の誤りに、一つ気が付いた。キスで免疫が伝染する、そこからワクチンの成分を割り出すのは後にして、唾液の中の成分を培養すれば良いのではないか。
大量生産出来るようになれば、俺の価値はない。
俺は、急いで時国に電話をかけた。
「時国、唾液は培養できるのか?」
この一言で、時国は俺が何をしようとしたのか、理解してしまったらしい。
「そのまま使えか。それもいい。出来るよ」
時国は、そのまま電話を切ってしまった。きっと、頭の中は、図式で一杯になり、言葉にまで気が回らなくなってしまったのだろう。
このことに気が付いていれば、加賀谷を死なすことは無かった。後悔しても、時間は戻らない。
「桜井さん、宮野さん。もうすぐ任務完了かもしれないので、今日は一緒に鍋にしましょう」
興野の秘蔵の焼酎と、ビールを隠し扉から出してきた。
「それは…」
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