第1章

2/14
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 すり鉢状の観客席には、身なりのいい紳士、着飾った貴婦人達がひしめきあっていた。彼らの顔には一様に興奮の色が差している。地下にあるせいか辺りは暗く、明かりは僅かな照明しかない。観客席の最前列に、自動小銃を構えたスーツ姿の男達が等間隔で並んでいる。彼らは厳しい眼で、十メートル下の闘技場を見下ろしていた。  闘技場は、約五十メートルほどの円形になっていた。床はコンクリートだが本来の色は失われ、暗い照明と相まって黒く染まって見えた。  スポットライトが闘技場の中央を照らし出した。そこには燕尾服を着た男が立っている。 「さあさあ、お集まりの紳士淑女の皆様方。大変長らくお待たせいたしました。これより本日のメインイベントを始めさせていただきます」  男が深々と一礼した。どうやら彼が司会者らしい。  スポットライトが今度は別の場所を照らし出した。闘技場を囲う壁の一角。四角く切り取ったように暗い穴が口を開けている。しばらくすると、そこから屈強な体をした男が姿を現した。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!