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「あの……もし良ければ」
「はいっ?」
「休みの日に食事を奢らせて貰えませんか?」
「ええっ? 定期券のお礼なら、これで充分です」
彼女は缶コーヒーを顔の前に掲げた。
「いや、そうじゃなくて、このご縁を大切にしたいと急に思ったんです。何か書くものありますか?」
「ええ。ありますけど」
彼女はポケットから手帳とボールペンを取り出した。
「これが僕の携帯の番号です。勤務先は、これ。ここに掛ければ僕が怪しいヤツでないことが証明されます。それが分かってからで構いません」
「うふふふ…………本当に面白い人。上原寛司さんですよね?」
「そうです。くつろぐ、つかさと書いて寛司です」
「分かりました。そろそろ戻らなくちゃ。コーヒー、ご馳走さまでした」
彼女は立って頭を下げた。
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