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「これ……ありがとう。大事にするよ」
「あなたはね。いつもそうやってはぐらかす。人の気持ちが分からないの?」
「えっ?」
「いいえ! そうじゃない! もう、これきりだからハッキリ言うけど。あなたは本当は分かってる! 分かってるくせに分からない素振り。いつもそう。とぼけてるんだわ!」
「とぼけてるって……」
「いい? この世は女と男が助け合わなければ生きて行けないの。奥さんを亡くしたからなんだって言うのよ。悲劇の主人公に成りきって自分の殻に閉じ込もって」
「いや、そんなつもりは」
「あなたに、そんなつもりはなくても周りの女はそうは見ないの。困っている女が居ても知らんぷり。男なら困っている女を助けてあげたらどうなの!」
苦い記憶だった。
ふと夜空を仰ぐと、星がまたたいた。
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