星がまたたく

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そうだ。借りた本を返さねば。 寛司は一旦、部屋に戻り、本を抱えて図書館へ足を運んだ。 図書館の入口で車椅子に乗った老人が寝ていた。 いや、容態が悪く意識を失っていたのだ。 寛司は図書館の職員に、それを伝え、救急車で運ばれる始終を見た。 駆けつけた老人の家族から丁寧な礼を言われた。 「ありがとうございました。あと少しで命を落とすところでした」 それは偶然の出来事なのだが、寛司が図書館へ足を運ばなければ老人は、そこで命を落としたかも知れない。 自分の何気ない行動が他人の人生に影響を及ぼす事がある。 この本だってそうだ。 返却されたばかりの本が書架の脇に置かれていた。 寛司は、何気なく手に取って、引き込まれた。借りようと思った。 それは山本周五郎の短編集だった。
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