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節分が過ぎた。
布都斯と下春は三十三歳なった。八島野十三歳、布留五歳である。
五穀豊穣を先祖に祈る新年の祭事がおこなわれ、新年の市の前の上集えが執りおこなわれた。
政の上議りの後、布都斯は上々から話を聞いた。
その昔、石見大森は、銀の鉱脈を探すうちに南の山並みを越えて安芸が支配する地へ踏みいってしまった。そこが安芸の地とは知らぬ大森は、地元の民と話しているうちに捕えられて、安芸津と呼ばれる津の安芸の館へ連行された。
館で大森は、安芸の地に足を踏みいれたわけを聞かれ、銀の鉱脈を探していることと、石見にない産物を欲していることを話し、安芸の地の民と交易したい旨を申しでた。
安芸は西州の都市国家と交易するため、金や銀を欲していた。大森の石見で産出する銀に興味を持った。大森が安芸に銀を貢いで従えば、安芸の地の民と自由な交易を許して、大森の一族を保護するが、従わねば生きては帰さぬと言って安芸は大森を従わせた。
大倭の南に吉備の国がある。
吉備の国へは仁多郷から簸乃川をさかのぼり、国境の船通山を越えて高梁川を下り玉島へ至る。ここは吉備津彦(?か、蘇民?か胡但?)の支配地である。安芸の地と同様に南に内海があり、海辺は漁業、海から遠ざかると農業が盛んである。特産物はない。一族をまとめる長はいるが、他の民を支配するような大豪族はいない。安芸との関係は薄い。
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