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「ささやかな歓迎会を開くから、来ないか?」
めっきり足が遠のいた俺に、組合長から直接声がかかった。
なるべく組合に顔を出す時間を、朝早くとか、夜遅くにしていた俺は、それまで噂でしか聞いたことのなかった女に、少しだけ興味を引かれた。
ここにいる以上、顔を合わせないではいられない。
どうせ、時間の問題だった。
歓迎会なら、一対一で話すようなことにもならないだろう。
そう思った俺は、ようやく重い腰を上げた。
初めて見たとき、哀しい目をする女だと思った。
俺と同じように、何かを諦めている光を、奥底に感じた。
一生懸命アプローチをかける男に目もくれず。
一人ひとりの顔を覚えようと、真剣だった。
人あしらいもうまく、内輪の話題にもさりげなく相槌を打って、不快にさせない。
何よりも立ち居振る舞いに、浜の女にはない上品さがあった。
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