第1章 慟哭

3/6
前へ
/30ページ
次へ
「死にたくなくても、海で命を落とすやつもいる。 だから、あの子がしたことは、海への冒涜だ。 けど、一番バカなのはお前だ。 わしらは、この海で生きていくしかない。 いくらお前が挑んだって、返してくれるわけでもなく。 あの子が喜ぶとも思えんな」 聞き分けのない子供を諭すように、源じいは繰り返す。 そんな説教なんて、聞きたくない。 わかってるんだよ。 わかっているけど、認めたくないんだ。 諦めたら、何もかもが無駄になるような気がして。 今自分が生きていること。 その確たる証が欲しいだけ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加