19人が本棚に入れています
本棚に追加
「新しい事務員が来た」
狭い町に、うわさが流れるのは早かった。
「訳ありみたいだけど、美人」
「独身らしい」
「なんか、島さんとこの空き家に住むみたいだよ」
酪農や、漁業、ちっぽけな商店街くらいしか働く場所のないこの町。
大きな夢を抱えて、町を出て行く若者が後を絶たない。
その状況で、よそ者の独身女が一人で暮らすことになったというのは、格好の話題だった。
嫁に行き遅れて、必死なのかもしれないねぇ。
美人なら、嫁さんにもらうかな。
好奇の目と、嘲笑が周囲にあふれ出す。
―――――― 俺には関係ない。
そう思いながらも、働いている場所が組合事務所である以上、顔を合わせないで済むはずがなかった。
最初のコメントを投稿しよう!