第2章 変化

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「新しい事務員が来た」 狭い町に、うわさが流れるのは早かった。 「訳ありみたいだけど、美人」 「独身らしい」 「なんか、島さんとこの空き家に住むみたいだよ」 酪農や、漁業、ちっぽけな商店街くらいしか働く場所のないこの町。 大きな夢を抱えて、町を出て行く若者が後を絶たない。 その状況で、よそ者の独身女が一人で暮らすことになったというのは、格好の話題だった。 嫁に行き遅れて、必死なのかもしれないねぇ。 美人なら、嫁さんにもらうかな。 好奇の目と、嘲笑が周囲にあふれ出す。 ―――――― 俺には関係ない。 そう思いながらも、働いている場所が組合事務所である以上、顔を合わせないで済むはずがなかった。
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