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「じゃあ、俺はこれで」
スッと立ち上がる人影にぼんやり顔を上げれば、監督さんとADさんたち数名が周りに挨拶をしていた。
時刻は20:00すぎ。
どうやらこれからまた仕事に戻るらしい。
凄い体力だ。
聞いてみれば、今回撮った映像の最終編集を今日明日でやってしまわなければならないらしい。
そんなことならば打ち上げなんてまた後日やれば良かったのに、と思ったが、今日を逃すとみんな次の仕事が目白押しでとてもじゃないが集まるのが難しい状況のようだった。
*
「ありがとうございました、また是非機会があったら…」
見送りと称して、抜け出した個室。
店の外に出てみれば思いの外寒い気温に身震いするしかなかった。
上着なしで出てきたのは間違いだったな、と思いながらぺこりと頭を下げると、澄江さんはポンッと私の肩を叩いて愉快そうにその口元を緩めていた。
「あぁ、相原さん次は脚本、本腰入れて書いてみたら?良いのができると思うよ」
「え、」
「お疲れさま、またメシでも」
「あ…はい、ありがとうございました」
ADさんやカメラマンさんたち、数名を引き連れて颯爽と去っていく背中。
なんだか本当に掴み所のない人だ。
人当たりはとても良くて、話しやすい人だけれど一所にはとどまっていないような独特の雰囲気を持っている。
村木さんもオーラのある人だけれど、澄江さんも違ったオーラをまとっている、素敵な人だ。
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