理想的なRatio.05

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  (脚本、か…うちの会社ではさすがに範疇外だなぁ) ガラリと開けた扉の向こう、店内は温かい気温と美味しそうな食事の香りが立ちこめている。 冷えてしまった手が、ジンジンと熱を取り戻していくように熱い。 「あ、すみません、私お手洗い寄っていきます」 「じゃあ先戻ってますね」 一緒に見送りに出てきた数名のスタッフさんやF社の担当さんに頭を下げて、個室には戻らずに店内を進む。 この店は基本すべて半個室のような作りになっているらしい。 周りを見ても、店員さん以外に誰の顔も見えない。 のれんのような、すだれのようなもので席がすべて区切られていて、かろうじて足が見えるだけだ。 中には掘りごたつのような作りになっていて足すら見えないところもある。 (お洒落な店だなぁ…これだったら確かに芸能人でも気兼ねなく来れる) 数時間前、特に人目も気にする様子なく入ってきた結婚したい男No.1と村木さんの姿が思い浮かぶ。 仕事の打ち上げなんだからコソコソする必要もないのは分かっているが、こんな風に普通に店にいるのは何だか変な感じ。 でも店内の様子を見て、変装もせず堂々と入ってきた2人に妙に納得した。 ***
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