理想的なRatio.05

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  撮影は、至極順調に進んだ。 火曜日の午前までと言われていた映像の撮影も、次のワンシーンで終了。 午後は雑誌や駅ナカ、街頭広告用の写真撮影を残すのみ。 長かったようで短かったこの仕事も、もう大詰めを迎えている。 「相原さん、そろそろ抜けてお昼行きませんか?」 病み上がりの火曜日。 今日も今日とて、私はもやしくんと二人三脚で過ごしていた。 「そうだね、行こっか」 「はい!」 俺、車とってきますね! 金曜日の昼に電話でした約束通り、今日はもやしくんとランチの予定。 嬉しそうに駆けていった背中を見ながら、そういうところは年相応なんだなぁと自然と笑みがこぼれた。 今日は、まだ…会っていない。 私ともやしくんが会社で一仕事済ませてからここに来たせいで着いた時にはすでに撮影は始まっていて、彼と顔を合わす事はなかった。 もちろん主役として出演しているんだからこのスタジオにはいるんだけど、カメラの前で演じている姿を一方的に見ただけで今日は視線を合わせることもなく、ここまで過ごせた。 時刻は11:45。 この調子だと、恐らくあと30分くらいは撮影が続くだろう。 その後はお昼休憩をとってから、写真撮影。 今回の写真撮影は基本主役のみのカット。 他のタレントさんは帰っちゃうだろうから…きっとこのスタジオも少し人が少なくなるはずだ。  (午後、どうにか早めに抜けて帰れないものだろうか…) 「あ、村木さん。ちょっと打ち合わせがてら外で昼食とってきます」 扉の近く。 腕を組んで壁にもたれかかっている人影を見付け、近くまで行ってみれば、ただのマネージャーというにはオーラがありすぎる人…村木さんだった。     
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