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「……コウちゃんは?」
俺はその瞳を見つめたまま大きく息を吸い込んだ。冷たい空気が、俺の胸の中をゆっくりと満たしていく。
「社長がさ、長いことバイト頑張ってくれてるから、毎日来られるんなら正社員に昇格させてやるって。ほら、俺もこの前ひとつ資格取ったしさ」
俺が昼間働いている金属加工の工場は、ロケット受注で部品の注文が増えて、最近少し景気がいい。
だから、こんなチャンスはなかなかないんだ、ひかる。
「うた……は?」
そう言いながらひかるは、ぽろぽろと涙をこぼす。
どうしてお前はいつもそんな風に先回りして、俺の気持ちを汲むのかな。
「だから、やめるって」
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