狼になりたい

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なるべく時間をかけて、階段をゆっくりと降りた。そんなことをしても何にもならないことはわかっているけれど。 外に出ると、いきなり冷たい風が吹いて身体がすくんだ。 通りはすっかり青と白のイルミネーションで埋め尽くされ、どこからか軽やかなジングルベルが聞こえてくる。 「bluemoon」は、俺がずっと世話になっていたライブハウスだ。 もちろんステージにも立たせてもらっていたし、ありがたいことにそれ以外の時はアルバイトもさせてもらった。 高校生の頃からだから、オーナーのリュウさんとは15年近く付き合ってきたことになる。 俺は事務所の窓を見上げて、もう一度頭を下げた。 これは、感傷というやつなんだろうか。 こみ上げてくる気持ちを飲み込んで、俺は歩き出した。 俺は、生きていかなくちゃいけない。
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