42人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「もう、いいんだ。ひかる」
ひかるはゆっくりと俺の腕を離した。ごくりと息を大きく飲み込んで、貼りついたみたいなひかるの顔が少し、ゆがむ。
その唇が震えていくのを、俺はしばらくの間じっと見ていた。
「……まさか、コウちゃん。bluemoon……どうしたの?」
「辞めてきた」
大きなその瞳を見開いて、ひかるは一瞬息を止めた。そして次の瞬間その身体はどん、と俺にしがみついた。
「なんでなんでなんで!……それって……あたしのため?」
その細くて柔らかい身体を抱き止めながら、俺は笑った。
「違うよ、ばーか」
最初のコメントを投稿しよう!