プロローグ

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世界は崩壊した。 仕方のないことだった。 ────核戦争。 始まりは誰も覚えていない。 人々が自らの愚行に気づいた時、星の九割以上はすでに焦土と化しており、しかしそれでも核の雨が止むことはなく、戦火はもう止められない所まで拡がってしまっていた。 人を焼き、街を焼き、国を焼き、世界を焼き、核の炎が星を包む。 嘆きも、悔やみも、怒りも、涙も、人の歴史も、そして地球という名前すらも、その何もかもを赤く呑み込み、そうして星の命はあっけなく終わりを迎えた。 核爆発によって地表から巻き上がった粉塵は太陽をすっぽりと覆い隠し、星全体が、長い長い氷河の時代に突入する。 ────それは、核の冬。 わずかばかりに生き残った人々は過去を悔やみ、しかしどうにもならない明日を嘆きながら、ただただ永遠にも近い冬を世代を越えて耐え忍んだ。 そうして、時は流れる。 ───数十年。 ──────数百年。 ──────────数千年。 ──────────────数万年。
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