91

2/10
前へ
/10ページ
次へ
学生寮の自室にもどると、パソコンのディスプレイにむかっていたジョージが話しかけてきた。 「強制催眠について、ちょっと調べていたんだ。よく催眠術師が振り子をつかうけれど、あれも定期的なリズムで半覚醒の状態に相手を誘うものらしい。鍵はリズムと相手の神経を集中させること。『呑龍(どんりゅう)』はまったくやっかいな技だね。試合中では嫌でも、敵に集中するし、あのリズムを無視する訳にもいかない。たぶん耳をふさいだくらいじゃダメだろう。視覚的な罠(わな)もあるのだろうと、ぼくは考えている。相手を見ずに闘うこともできないし、東園寺(とうえんじ)君は難敵だ」  興奮してまくし立ててきたが、どこか楽し気で興奮しているようだ。 「まあ、今の予定だと順当に勝ちあがれば、タツオより先にぼくのほうが東園寺君と当たることになる。そのときにできる限りのチャレンジをしてみるよ。タツオは参考にしてくれ」  タツオは自分のベッドに腰かけた。相撲部の後藤との闘いで、身体(からだ)の芯(しん)まで疲れている。一度座るともう立ちあがるのが困難なほどだった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

316人が本棚に入れています
本棚に追加