18 遠距離

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「今度、夏樹とキャンプに行きたいな。リスが夏樹のことを仲間だと思って集まってくるかもしれない――なあ、芹澤もそう思わないか?」 「……はあ」  話を振られても困る。久志の言う通り、夏樹のことを山のリスたちが仲間と間違えて集まってくる様子は想像できるが、久志ほどの妄想力を芹澤は持ち合わせていない。 「ところで芹澤は何も買わなくてよかったのか?」 「そうですね……まだ少し時間もあることですし、ちょっと失礼して飲み物でも買ってきます」 「あ、芹澤さん、僕もご一緒します」  コンビニへ向かう芹澤の後を、山下が小走りでついて行く。 「山下くん、先にお店に行っててください」 「……?」 「私は松本くんに電話を入れてみます」  コンビニの店頭で芹澤がそう言うと、山下はわかりましたと先にコンビニの中へ入って行った。 「――松本くんですか?」 『…………』  新幹線の出発までそう時間はない。話した感じ、とりあえず夏樹も元気そうだ。夏樹は大丈夫そうだと久志へ伝えようと、芹澤が顔を上げると券売機で久志が乗車券を買おうとしているのが目に入った。 「ちょっと待ってください――専務! チケットは私が持っています」  全く、目を離すとあの男はすぐに勝手に動く。久志は気を利かせて新幹線の乗車券を買おうとしていたのだろうが、芹澤が事前にチケットを手配していないなんてあるはずがない。 「――すみません、何でしょう」 『久志さんと何処かに行かれるんですか?』 「例の出張ですよ。専務が変にやる気を出しまして、出発が前倒しになったんです。全く、振り回されるこっちの身にもなってもらいたいです」  芹澤が大きくため息をつく。  それから二、三、夏樹と言葉を交わし、芹澤は携帯をスーツの内ポケットに入れた。 「芹澤さん、紅茶でよかったですか? 僕、買っておきました」 「すまない、山下くん。つい話し込んでしまったようだ、それいくらだった?」 「これくらいいいですよ。それより松本くんは? 風邪で休んでいたんでしょう、元気そうでしたか?」 「思っていたより元気そうだったよ」  山下へありがとうと言って、芹澤がミルクティーのペットボトルを受けとる。 「ゆっくり休んでいれば、私たちが帰る頃には、よくなっているでしょう」  とりあえず夏樹に心配はなさそうだと安堵していた芹澤には、山下が複雑な表情をしていたことには気づかなかった。
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