19 お兄さんな気分

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「ええっと……理央、くん?」 「はい」 「ごめん、よく聞こえなかったんだけど」 「はい。僕、恋愛対象が男なんです」  夏樹の目を真っ直ぐ見つめながら理央は言った。 「突然こんなことを聞かされても驚くだけですよね。でも、お兄さんのように思っている夏樹さんには知っていてもらいたくて」  理央から発せられた兄という言葉に夏樹ははっと我に返った。  偶然とはいえ、自分の周りのホモ率の高さに驚いている場合ではなかった。可愛い弟が大切なことを打ち明けてくれているというのに、兄としてしっかりしないといけない。  それに夏樹には、自分の性癖を打ち明けている理央の気持ちが痛いほどわかる。夏樹だって理央と同じなのだ。 「理央くん、大丈夫だよ。君がどんな人間だって、俺にとって君は弟みたいな存在だ。それはずっと変わらないよ」 「――夏樹さん……お兄さんって呼んでもいいですか?」  夏樹がいいよと頷くと、理央は感極まったように「兄さん」と言いながら夏樹に抱きついてきた。夏樹は理央の体をしっかりと抱きとめ、兄と呼ばれた嬉しさを噛みしめた。 「ええっと……理央くん?」 「はい」 「何をしているのかな?」  夏樹に抱きつく理央の手が、意味深な動きで夏樹の脇腹から腰にかけてのラインを撫でている。 「気持ちいいなと思って。僕、逞しすぎる人って苦手なんです。夏樹さんの体って、あんまり筋肉もついてないし……すごくいい感じだなって」  そう言いながらも理央の手の動きは止まらない。 「ちょ、理央くん、そろそろ止めてくれないかな……っ」  微妙に体を捩りながら夏樹が言うと、理央の手がぴたりと止まった。 「僕が触ったら気持ち悪いですか?」 「え? き、気持ち悪いってわけじゃないけど」  変に気持ちがいいから困っているのだ。 「僕はもっと兄弟のスキンシップを図りたいです……ダメ? 兄さん」 「――――っ」  夏樹の腰へ手を回したまま、理央が甘えたように首を傾げる。  さらに上目使いで見つめられ、夏樹はダメだと言えなくなってしまった。 「ち、ちょっとだけ……あとちょっとなら、いい……よ」 「ありがとう! 兄さん、大好き!」 「う、わっ!」
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