21 お兄さんは心配です

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 夏樹が目を覚ますと、そこは見覚えのない部屋だった。  以前、青嶋に連れ去られた時は手足の自由を奪われ、目隠しまでされていたが、今回はただベッドに寝かされているだけだ。 「――ここ、どこ?」  夏樹は目を閉じ、気を失うまでの記憶をゆっくりと手繰り寄せた。 (確かバイトが終わった理央くんとご飯を食べに行って、そして理央くんが話があるからって……) 「そうだ! 理央くん!」  これまでの経緯をすっかり思い出した夏樹が目を見開く。そして、とりあえず理央と話をしなければと体を起こすためベッドに肘をついた。 「――――えっ?」  ベッドに肘はついたが、体を起こすことができない。  体に全く力が入らず、夏樹の肘はそのままずるずるとシーツの上を滑った。 「うそ……何で……」  目を開いたり手足を動かすことはかろうじてできるのだが、嘘のように体に力が入らない。  夏樹はベッドに仰向けになったまま、試しにゆっくりと右腕を上げてみた。 「…………っ、お、おも……っ」  まるで右腕に重りがいくつもぶら下がっているようだ。  腕を上げようと何とか頑張ってみたが、思う通りに動かない。右腕をほんの数センチベッドから浮かせただけで、もうダメだと夏樹は諦めた。 「気がつきましたか?」 「理央……くん?」  声のした方に夏樹が目を向けると、部屋の入り口のドアに凭れた理央が夏樹のことを見ていた。 「なかなか目を覚まさないから、薬の量が多すぎたんじゃなかって心配してたんですよ」 「……あの、理央くん……ここは……?」 「僕の家です。あ、親は二人とも今は日本にいないので、騒いでも誰も助けには来てくれませんよ」 「ひとり、なのか?」 「はい。うちは父も母もとても忙しい人で、家族全員が揃ったことなんて小さな頃から数えるほどしかないんです。何をやっても怒られないし、気楽でいいですよ」 「理央くん」  気楽だと言いながら笑ってはいるが、夏樹にはそう言う理央が何だか寂しそうに見えた。  夏樹がじっと理央のことを見つめていると、理央は夏樹の側までやってきて、ベッドの端にそっと腰を下ろした。
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