21 お兄さんは心配です

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「ねえ、夏樹さん。ずっとここに……僕と一緒にいませんか?」  理央が人差し指の背で夏樹の額にかかった髪を優しくすくう。 「彼と僕と夏樹さんと三人で暮らしましょう? きっと楽しいと思いますよ」 「理央くん?」 「彼、僕より夏樹さんの方が好きみたいなんです。僕も夏樹さんのことは好きだし、彼だって夏樹さんが一緒ならずっと僕と一緒にいてくれるはず……」 「――彼?」 「はい。彼――渉さん、彼だけなんです、僕のことをとても愛してくれたのは。結局後で僕のことは夏樹さんの代わりだってわかったんですけど……だけど、夏樹さんに会ったら、僕も夏樹さんのこと大好きになっちゃいました」 (渉さん? 渉って、どこかで聞いたような気がするけど……どこだったっけ) 「夏樹さん、こっち見てください」 「――――え?」  露になった夏樹の額に、笑った形のままの理央の唇が触れた。 「こーら、理央。何を勝手なことをしているんだ?」 「渉さん!」  部屋の入口の方から聞こえた声に理央は嬉しそうな声を上げ、夏樹の元からぱっと離れると、声のした方へ駆けて行った。 「――――あ、お前……」  理央の行った方へと視線を移した夏樹が驚きに目を見開く。 「…………山下!?」  部屋の入口には、ぴったりとくっついた理央の腰へ腕を回した山下が立っていた。
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