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「ねえ、夏樹さん。ずっとここに……僕と一緒にいませんか?」
理央が人差し指の背で夏樹の額にかかった髪を優しくすくう。
「彼と僕と夏樹さんと三人で暮らしましょう? きっと楽しいと思いますよ」
「理央くん?」
「彼、僕より夏樹さんの方が好きみたいなんです。僕も夏樹さんのことは好きだし、彼だって夏樹さんが一緒ならずっと僕と一緒にいてくれるはず……」
「――彼?」
「はい。彼――渉さん、彼だけなんです、僕のことをとても愛してくれたのは。結局後で僕のことは夏樹さんの代わりだってわかったんですけど……だけど、夏樹さんに会ったら、僕も夏樹さんのこと大好きになっちゃいました」
(渉さん? 渉って、どこかで聞いたような気がするけど……どこだったっけ)
「夏樹さん、こっち見てください」
「――――え?」
露になった夏樹の額に、笑った形のままの理央の唇が触れた。
「こーら、理央。何を勝手なことをしているんだ?」
「渉さん!」
部屋の入口の方から聞こえた声に理央は嬉しそうな声を上げ、夏樹の元からぱっと離れると、声のした方へ駆けて行った。
「――――あ、お前……」
理央の行った方へと視線を移した夏樹が驚きに目を見開く。
「…………山下!?」
部屋の入口には、ぴったりとくっついた理央の腰へ腕を回した山下が立っていた。
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