22 こんな時こそ冷静になりましょう

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「おい、まだか? まだ着かないのか?」  後部座席に座る久志が、運転席の山路へ声をかけた。 「久志さん、さっきも言ったと思いますが、あと十分もすれば到着しますから。ちょっと落ち着いてください」 「だが芹澤……」 「三分も経たないうちに、そう何度も声をかけられたら山路が運転に集中できません。到着が遅れても良いんですか?」  助手席から芹澤が久志へ咎めるような目を向けた。 「…………」 「分かったなら、少し静かにしてください。あ、山路くん、そこの信号を左に」 「はい」  芹澤の指示で、三人を乗せた車が左に曲がる。  山路も急いでいたようで、あまり減速せずに車が左折したため、久志の体も大きく左に傾いた。 「おっ……と」  座席の上でバランスをとりながら、久志が膝に乗せた箱を支える。 「山路くん、急いでもらうのは有難いですが、安全運転でお願いします。到着するまでに事故でも起こしたらどうするんですか」 「すっ、すみません!」  芹澤から注意されて余計に焦ってしまったのか、山路が頭を下げると同時にガクンと大きく車が揺れた。 「ちょ、山路くん! 私を殺す気ですかっ!?」 「うわっ、すみません! すみません!」  山路が芹澤に謝る度に車が揺れる。 「……ちょっとそこのコンビニで、一度車を停めてくれ」  このままだと夏樹の元へたどり着くまでに、車がどうにかなってしまうと判断した久志が、ちょうど前方に見えたコンビニに入るよう山路へ指示を出した。  ガクンガクンと小刻みに揺れながら車がコンビニへ向かう。  無事に駐車スペースに車が停まったところで、車内に誰のものともつかない安堵のため息が漏れた。 「山路くん」 「…………はい……」  芹澤の声に、運転席の山路が大きな体を小さく丸める。 「ここからは私が運転をしますから、あなたは助手席でおとなしくしていてください」 「……はい」  すっかり項垂れてしまった山路は、おとなしく芹澤と座席を交替した。
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